家の中で発生する「ハエの幼虫」というと、多くの人は生ゴミに湧く、白くて芋虫のような「ウジ虫」を想像するでしょう。これは主にイエバエなどの幼虫です。しかし、実はもう一種類、私たちの家庭、特に水回りで頻繁に発生する、見た目も生態も全く異なる「ハエの幼虫」が存在します。それが、「チョウバエ」の幼虫です。この二種類の幼虫の違いを理解することは、発生場所を特定し、適切な駆除を行う上で非常に役立ちます。まず、私たちが「ウジ虫」として最もよく知るイエバエの幼虫は、体長が一センチ程度で、白からクリーム色、円錐形で頭部が尖っているのが特徴です。脚はなく、体を伸縮させながらうごめくように移動します。彼らの発生源は、前述の通り、腐敗した生ゴミや動物の糞など、陸上の有機物です。したがって、彼らを見つけた場合、捜索すべきはゴミ箱やその周辺ということになります。一方、チョウバエの幼虫は、全く異なる環境に生息しています。彼らの発生源は、浴室や洗面所、キッチンの排水管の内部に溜まったヘドロや汚泥です。水中の環境に適応しており、体長は四ミリから十ミリ程度、細長いミミズのような形状で、体色は灰色や黒っぽい色をしています。体の両端に呼吸するための管を持っており、その見た目から「オナガウジ」とも呼ばれます。彼らは排水管の壁面に付着した汚泥を食べて成長し、やがて成虫となって排水口から這い出してきます。もし、浴室やトイレの壁に、ハート型の翅を持つ小さなハエ(チョウバE)が止まっているのを見かけたら、その排水管の中では、このオナガウジが繁殖している可能性が極めて高いです。駆除方法も、それぞれの生態に合わせて変える必要があります。イエバエのウジ虫は、発生源であるゴミそのものを処分し、熱湯や殺虫剤で対処します。対して、チョウバエの幼虫は、排水管の内部に潜んでいるため、パイプクリーナーや柄の長いブラシ、そして熱湯を用いて、発生源である汚泥そのものを洗い流すというアプローチが必要になります。同じ「ハエの幼虫」でも、その姿と住処は全く違うのです。
チョウバエの幼虫とイエバエの幼虫