平和の象徴ともされる鳩ですが、一度ベランダなどに住み着かれると、深刻なフン害や騒音を引き起こす厄介な存在と化します。一刻も早く追い払いたい、退治したいという気持ちは当然ですが、ここで絶対に忘れてはならないのが「鳥獣保護管理法」という法律の存在です。この法律を知らずに自己流の対策を行ってしまうと、意図せず法律違反となり、罰則の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。鳥獣保護管理法では、ドバトを含む多くの野生鳥獣は、許可なく捕獲したり、傷つけたり、殺したりすることが固く禁じられています。つまり、腹が立つからといって、鳩を網で捕まえたり、エアガンなどで攻撃したりする行為は、明確な法律違反となります。これは成鳥だけでなく、卵や雛に対しても同様に適用されます。もし、ベランダに鳩が巣を作り、すでに卵を産んでしまっている場合、その巣を勝手に撤去したり、卵を処分したりすることはできません。たとえ自分の家の敷地内であっても、法律で保護されている生命を奪う行為とみなされてしまうのです。この状況に陥ってしまった場合、原則としては、雛が巣立つまでの一ヶ月から二ヶ月程度、静かに見守るしかありません。そして、雛が完全に巣立ったのを確認してから、空になった巣を速やかに撤去し、徹底的な清掃と消毒を行った上で、二度と巣作りができないように防鳥ネットを張るなどの再発防止策を講じる必要があります。鳩を「追い払う」ことは許されていますが、「駆除」や「捕獲」は許されていない、というこの線引きを正しく理解することが極めて重要です。例えば、鳩が嫌がる忌避剤を撒いたり、物理的に近寄れないようにネットを張ったりすることは、鳩を傷つけずに追い払う「防除」行為にあたるため、法律上問題ありません。しかし、その行為が結果的に鳩を傷つける可能性がある場合、例えば粘着力の強すぎる鳥もちシートを使用して鳩が動けなくなってしまった、といったケースでは、違法と判断される可能性も出てきます。鳩対策は、常に「鳩を傷つけない」という大原則のもとで行わなければならないのです。