虫刺されによる激しいかゆみや水ぶくれがようやく治まっても、それで終わりではありません。多くの人を悩ませるのが、その後に残る「色素沈着」です。茶色や紫色のシミのような跡が何か月も、場合によっては何年も消えずに残ってしまうことがあります。この嫌な跡を残さないためには、水ぶくれが治まった直後からの正しいスキンケアが非常に重要になります。色素沈着が起こる主な原因は、炎症です。虫刺されによって引き起こされた強い炎症は、皮膚のメラノサイトという色素細胞を活性化させます。その結果、メラニン色素が過剰に生成され、それが皮膚に沈着してしまうのです。また、かゆみに耐えきれずに掻きむしってしまうと、その物理的な刺激もメラノサイトを活性化させ、さらに跡が残りやすくなります。したがって、跡を残さないための最大のポイントは、まず炎症が起きている期間に、いかに掻かずに過ごせるか、そして炎症をできるだけ早く鎮めるかにかかっています。水ぶくれが破れたり、自然に吸収されたりして傷が治り始めたら、次の二つのケアを徹底しましょう。一つ目は「保湿」です。傷が治った後の皮膚は非常に乾燥しやすく、バリア機能が低下しています。乾燥した肌は外部からの刺激に弱く、ターンオーバーも乱れがちになります。低刺激性の保湿剤をこまめに塗り、肌の潤いを保ち、正常なターンオーバーを促すことで、メラニン色素の排出を助けます。二つ目は「紫外線対策」です。患部に紫外線が当たると、メラノサイトがさらに刺激され、色素沈着が濃くなったり、定着しやすくなったりします。外出する際は、患部に日焼け止めを塗る、衣類で覆う、あるいはUVカット機能のあるテープを貼るなどして、徹底的に紫外線をブロックしてください。この地道な保湿と紫外線対策を数か月間続けることが、あの日の虫刺されを過去のものにするための、最も確実な道筋となるのです。