ある夜、部屋の照明の周りを、小さな蛾が数匹、頼りなく飛び回っている。あるいは、クローゼットから出した衣類や、キッチンの食品庫で、糸を引いたような痕跡と共に、小さな蛾の姿を見つけた。そんな経験はありませんか。家の中で見かける小さい蛾は、その種類によって、発生源と被害の内容が大きく異なります。彼らの正体を正しく知ることは、効果的な駆除と対策の第一歩です。家屋内で問題となる小さい蛾は、主に「食品害虫」と「衣類害虫」の二つのグループに大別されます。まず、「食品害虫」の代表格が「ノシメマダラメイガ」です。体長は1センチメートルに満たない、茶色と白のツートンカラーが特徴の蛾で、日本の家庭で最も一般的に見られる食品害虫の一つです。彼らの幼虫(イモムシ状)が、米や小麦粉、乾麺、お菓子、ペットフードといった、保存している乾燥食品を食害し、糸を張って糞をするため、食品を汚染します。次に、「衣類害虫」として知られるのが「イガ」や「コイガ」です。これらは、体長5ミリメートル程度の、淡い褐色をした非常に小さな蛾です。彼らの成虫は何も食べませんが、クローゼットやタンスの中に卵を産み付けます。そして、孵化した幼虫が、ウールやカシミヤ、シルクといった、動物性の天然繊維を食べて、衣類に穴を開けてしまうのです。これらの小さい蛾は、どこからともなく湧いてくるわけではありません。その発生源のほとんどは、「外部からの侵入」と「食品や物に付着しての持ち込み」です。ノシメマダラメイガであれば、購入したお米や小麦粉の袋に、すでに卵が産み付けられていた。イガであれば、屋外に干した洗濯物に成虫が付着し、そのまま取り込んでしまった。あるいは、窓の隙間から、光に誘われて成虫が侵入し、産卵場所を探して家の中を飛び回っている。小さい蛾を一匹見つけたということは、その家のどこかに、彼らが繁殖できる「餌」と「快適な環境」が存在する、という明確なサインなのです。
家にいる小さい蛾の正体と発生源