家の軒先にハチの巣を見つけた時、私たちの心にまず浮かぶのは「これは、あの凶暴なスズメバチの巣ではないか」という強烈な恐怖心です。しかし、都市部でよく見かける巣の多くは、比較的おとなしいアシナガバチのものであるケースが少なくありません。この二種類のハチは、巣の形状やハチ自体の見た目、そして何よりその危険度が全く異なります。正しい見分け方を身につけることは、パニックに陥らず、適切な対応(自分で駆除できるのか、それとも絶対にプロに任せるべきなのか)を判断するための、極めて重要な知識となります。まず、最も分かりやすい違いは「巣の形」です。アシナガバチの巣は、下から見上げると六角形の育房(幼虫を育てる部屋)がたくさん見え、お椀を逆さにしたような形や、シャワーヘッドのような形をしています。巣はむき出しの状態で、外側を覆う壁はありません。一方、スズメバチの巣は、初期段階ではとっくりを逆さにしたような形をしていますが、成長すると綺麗な球体や、マーブル模様のボールのような形になります。巣の内部は幾層にも分かれていますが、外側は頑丈な外皮で完全に覆われており、内部の育房を見ることはできません。この「巣がむき出しか、覆われているか」が、最大の見分けるポイントです。次に、「ハチの見た目」にも違いがあります。アシナガバチは、その名の通り後ろ脚が長く、飛んでいる時にその長い脚をだらりと垂らしているのが特徴です。体つきは全体的に細身で、スマートな印象を与えます。対して、スズメバチは全体的にずんぐりとしており、筋肉質で力強い体つきをしています。頭部が大きく、顎も発達しており、見るからに攻撃的な印象です。そして、最も重要な「危険度」の違いです。アシナガバチは、巣を直接刺激したり、手で払ったりしない限り、自ら積極的に人を襲ってくることは比較的少ないです。しかし、スズメバチは非常に攻撃的で、巣に近づいただけでも威嚇し、執拗に追いかけてきて攻撃します。その毒性もアシナガバチよりはるかに強く、アナフィラキシーショックによる死亡例も後を絶ちません。もし、あなたが見つけた巣が、ボールのような形で外皮に覆われている場合は、迷うことなく、すぐにその場を離れ、絶対に自分で駆除しようとせず、速やかに専門の駆除業者に連絡してください。それは、あなたの命を守るための、唯一の正しい選択です。
アシナガバチとスズメバチ巣の見分け方