キッチンやパントリーで発見される小さい蛾の犯人は、そのほとんどが「ノシメマダラメイガ」であると言っても過言ではありません。彼らは、家庭における「貯穀害虫」のチャンピオンとも呼ぶべき存在で、その被害は広範囲に及びます。ノシメマダラメイガの成虫は、体長7〜8ミリメートル程度で、羽の根元側が淡い黄色、先端側が赤褐色という、はっきりとしたツートンカラーをしています。この特徴的な色合いを覚えておけば、他の蛾と簡単に見分けることができます。成虫は、夜行性で、照明の光に集まる習性があります。彼ら自身は、口が退化しているため何も食べませんが、その生涯で、200個以上もの卵を産み付けます。本当の厄介者、そして被害の張本人は、その「幼虫」です。卵から孵化した幼虫は、白っぽいイモムシ状で、非常に貪欲な食欲を持っています。彼らの好物は、米や小麦粉、そば粉といった穀粉類、パスタやそうめんなどの乾麺、チョコレートやクッキー、スナック菓子、シリアル、ナッツ類、そしてペットフードまで、実に多岐にわたります。幼虫は、食品を食べながら、ネバネバとした糸を吐き、自分の体や糞を絡めながら、巣のようなものを作ります。そのため、被害にあった食品は、まるで蜘蛛の巣が張られたかのように、糸が引いて固まっているのが特徴です。この状態になってしまうと、もはやその食品を食べることはできません。ノシメマダラメイガの最も厄介な点は、その強力な顎(あご)です。幼虫は、食品のビニール袋や、紙袋を、いとも簡単に食い破って中に侵入します。密閉されていない容器や、輪ゴムで口を縛っただけの袋は、彼らにとって何の障害にもなりません。もし、キッチンでこの蛾を一匹でも見つけたら、それは非常事態宣言です。パントリーや食品庫に保管している、すべての乾燥食品を点検し、被害の発生源を特定、そして処分するという、徹底的な作業が必要となります。