アシナガバチの巣は、条件さえ揃えば個人での駆除も不可能ではありません。しかし、その手軽さゆえに、知識不足や油断から危険な行動を取ってしまい、手痛い反撃に遭うケースが後を絶ちません。ここでは、アシナガバチの巣駆除において、重大な事故につながりかねない「絶対にやってはいけないこと」を具体的に解説します。安全を確保するためにも、これらの禁止事項を必ず頭に入れておいてください。まず、最も危険で無謀な行為が「日中の駆除」です。昼間の時間帯は、アシナガバチの活動が最も活発な時間です。多くの働きバチが巣の外で餌集めをしており、巣に残っているハチも警戒心が非常に高まっています。この状態で巣に近づけば、偵察バチにすぐに察知され、巣全体がパニック状態に陥り、総攻撃を受けることになります。駆除は必ず、ハチが巣に戻り活動が静まる夜間に行うのが鉄則です。次に、「軽装での作業」も命取りになりかねません。半袖や半ズボン、サンダル履きといった格好で駆除に臨むのは、自ら刺されに行くようなものです。アシナガバチの針は、薄い衣服なら簡単に貫通します。厚手の生地で全身を覆い、肌の露出を完全になくすことが最低限の防御策です。特に、黒い色に攻撃してくる習性があるため、白っぽい服装を選ぶことも重要なポイントです。また、「巣を棒で叩き落とすだけの行為」も非常に危険です。巣を物理的に破壊すれば解決するだろうという考えは大きな間違いです。叩き落とされた衝撃で、巣にいたハチは一斉に飛び立ち、興奮状態で周囲を攻撃します。殺虫剤で確実に無力化する前に巣を刺激するのは、自殺行為に等しいと心得ましょう。同様に、「巣に近づきすぎる」のも禁物です。ハチには縄張りを守るための警戒範囲があり、その範囲内に侵入すると攻撃対象とみなされます。強力なジェットタイプの殺虫剤を使えば、二メートルから三メートル離れた場所からでも十分に薬剤が届きます。安全な距離を保つことを常に意識してください。さらに、「殺虫剤をケチる」のも失敗の元です。中途半端な噴射では、ハチを完全に駆除できず、生き残ったハチの猛烈な反撃を誘発するだけです。一本丸ごと使い切るくらいの気持ちで、躊躇なく、長時間噴射し続けることが成功の鍵です。これらの禁止事項は、すべてアシナガバチの習性と危険性を軽視したことから生じるものです。