我が家の平和な日常は、ある春の日、一羽の鳩の来訪によって静かに終わりを告げました。最初は、手すりにちょこんと留まる姿を微笑ましく眺めていたのですが、それが間違いの始まりでした。数日後には二羽になり、ベランダの隅に小枝が落ちているのを発見。彼らがこの場所を新居にしようとしていることに気づいた時、私の長い戦いのゴングが鳴らされたのです。まず私が試したのは、インターネットで見たCDを吊るす方法でした。キラキラと光るディスクは、数日間は効果があったように見えましたが、賢い鳩たちはすぐにそれが無害であることを見抜き、CDのすぐ隣でくつろぐようになりました。次に、鳩が嫌がるという匂いのスプレータイプの忌避剤を購入し、ベランダ中に撒き散らしました。独特のハーブの香りが部屋にまで漂ってきましたが、鳩たちは少し顔をしかめるだけで、飛び去る気配はありません。私の努力をあざ笑うかのように、フンの量は日増しに増えていきました。もう物理的に留まれなくするしかないと決意し、手すりの上にプラスチック製の剣山を設置しました。これでさすがに諦めるだろう、と期待したのですが、彼らはその剣山の隙間に器用に足を置き、あるいは室外機の上へと拠点を移しただけでした。私の対策は、ことごとく彼らの執着心の前にもろくも崩れ去っていったのです。そして、ついにその日がやってきました。室外機の裏の狭い隙間に、雑な作りながらも確かに「巣」と呼べるものが完成し、そこには二つの白い卵が鎮座していたのです。鳥獣保護管理法の存在を知っていた私は、もはや手出しができないことを悟り、絶望しました。それから約一ヶ月半、フンと羽毛にまみれ、鳴き声に悩まされながら、雛が巣立つ日をただひたすら待ち続けました。そして、ようやく巣が空になった日、私はすぐに専門の業者に連絡しました。プロの手によってベランダ全体が鳥よけネットで覆われ、ようやく我が家に平和が戻ったのです。この戦いを通じて私が学んだのは、鳩の執着心を甘く見てはいけないということ、そして対策は中途半端が一番いけないということでした。