長年、日本各地でスズメバチの巣と対峙してきたベテランの作業員に話を伺うと、彼が最も危惧しているのは「自分で何とかできる」という一般の方々の過信だと言います。彼は、現場に駆けつけたときに既に住人が刺されて救急搬送されていたり、不十分な防護で蜂を興奮させ、近隣住民にまで被害が広がっていたりする凄惨な事例を何度も目にしてきました。彼によれば、スズメバチ、特にオオスズメバチやキイロスズメバチの攻撃性は、他の蜂とは比較にならないほど高く、巣を守るために彼らが放つ警報フェロモンは、一瞬にして周囲の全ての蜂を戦闘モードに切り替えてしまうといいます。素人が市販のスプレーを吹きかける行為は、いわば火に油を注ぐようなものであり、一度蜂が逆襲に転じれば、防護服なしでは逃げることすら困難です。作業員は語ります。蜂の針は数ミリの厚さなら容易に貫通し、さらに毒液を空中に散布して仲間にターゲットを教える能力さえ持っています。アナフィラキシーショックは、過去に刺された経験がなくても起こり得ることが科学的に証明されており、一刺しが命取りになる現実に、もっと多くの方が危機感を持ってほしいと彼は強調します。また、作業員が駆除後に必ず行うのが、戻り蜂への対処です。巣を物理的に取り除いただけでは、外で餌を探していた蜂たちが戻ってきて、家を失った怒りから非常に攻撃的な状態で付近を彷徨うことになります。プロの駆除業者は、この戻り蜂を粘着トラップなどで一掃し、再発の芽を完全に摘み取りますが、自力での駆除ではこの工程が抜け落ちることが多く、結果として被害が長引くことになります。駆除業者は、現場の難易度を瞬時に判断し、必要であれば複数名でバックアップ体制を敷きます。それは、彼らが蜂の恐ろしさを誰よりも知っており、自分の命とお客様の安全を最優先に考えているからです。数千円を惜しんで命を危険にさらすことは、あまりにも割に合わない賭けであると、現場の最前線で数え切れないほどの針の脅威にさらされてきた彼は、重みのある言葉で締めくくりました。
現場の最前線で戦う作業員が語る自力駆除の致命的リスク