クリニックを訪れる患者さんの中に、腕や脚に真っ赤な線状の腫れを作り、顔を歪めて痒みを訴える方が急増する季節があります。その多くが、火傷をしたような見た目に驚き「何か毒のある植物に触れたのではないか」や「帯状疱疹ではないか」と心配されていますが、診察をするとその正体は、やけど虫として知られる昆虫による皮膚炎であることがほとんどです。皮膚科医の視点から言えば、この疾患の最大の特徴は、炎症が起きた部分が細長く、まるで筆でなぞったような形状をしていることにあります。これは、アオバアリガタハネカクシという虫が皮膚の上を這い回り、その際に分泌されたり、叩き潰されたりして出た体液が皮膚に広がることで起こる現象です。毒素であるペデリンは、細胞のタンパク質合成を阻害する作用があり、それが皮膚の表層に重度の炎症を引き起こすため、見た目が火傷に酷似するのです。通常の虫刺されと大きく違うのは、刺された瞬間の反応ではなく、数時間から半日の潜伏期間を経て症状がピークに達するという点です。診察時には、患者さんに「数時間前に小さなアリのような虫を払いのけませんでしたか」と確認しますが、多くの方が無意識の行動であるため覚えていません。治療において重要なのは、炎症のステージを見極めることです。初期の赤みが強い時期には、強力なステロイド剤で一気に炎症を叩く必要があります。これを怠ると、水疱が広がり、皮膚の深いところまでダメージが及んでしまいます。また、二次的な細菌感染を防ぐために、抗生物質の軟膏を併用することもあります。よく間違われやすい帯状疱疹との見分け方は、痛みと痒みの質、そして発疹が神経の通り道に沿って出ているかどうかですが、線状皮膚炎の場合は、身体のどこにでも、そして左右非対称に現れるのが特徴です。火傷のような跡と痒みに直面した際は、決して自分だけで解決しようとせず、専門医による適切な強度の薬剤選択に任せてください。それが結果として、痛みを最小限に抑え、美しい肌を元通りに取り戻す唯一の解決策となるからです。