それは私の父が古希を迎えた年の夏、実家の庭にある大きな金木犀の木に、巨大なスズメバチの巣が見つかったことから始まりました。父は昔気質の人間で、たかがハチくらい自分で何とかできると豪語し、物干し竿を片手に巣を突こうとしていました。その光景を見た私は、必死で父を止め、その日のうちに専門業者を呼びました。やってきた業者の見積もりは、私の予想を遥かに超える十万円というものでした。正直なところ、一瞬言葉を失いましたが、業者の方が語った言葉が私の決断を後押ししました。この巣はオオスズメバチの可能性があり、一度刺激すればこの住宅街一帯が戦場になります、という警告でした。父は最初、ハチの巣に十万円も払えるかと憤慨していましたが、私は父に説得を続けました。もし父が刺されて入院したり、万が一のことがあったりしたら、十万円では到底済まない。それに、近所の子供たちが刺されるようなことがあれば、私たちは一生その責任を背負って生きていかなければならない。家族の命と、地域の安全を守るためのコストとして、十万円は高いだろうか、と。最終的に父も折れ、私たちは駆除を依頼しました。作業は深夜から早朝にかけて行われ、完全防護の作業員たちが連携して、一つ一つの隙間を埋めるようにハチを制圧していく姿は、まさにプロの仕事でした。撤去された巣は驚くほど重く、中には今にも羽化しようとする無数のハチが詰まっていました。業者は巣を取り除いた後も、数日間にわたって戻り蜂の様子を見に来てくれ、父に対してもハチを寄せ付けない庭の手入れの仕方を丁寧に教えてくれました。作業が終わった後、父は静かに、あんなに大変な仕事だとは思わなかった、頼んで良かったと言ってくれました。あの十万円という出費は、単なる害虫排除のためのものではなく、父の命を守り、近隣への迷惑を未然に防ぎ、そして何よりも私たちの心の平穏を取り戻すための、家族の結束の証でもありました。今では、再び平和を取り戻した金木犀の木の下で、孫たちが安心して走り回る姿を見ることができます。あのとき、目先の金額に惑わされず、プロに任せるという決断を下したことは、家族全員にとって最良の選択だったと確信しています。家族の安全には代えられない、十万円という数字の重みを、私たちはあの夏、深く心に刻みました。
家族の安全のためにスズメバチ駆除に十万円を投じた決断