それは真夏の暑い昼下がりのことでした。久しぶりに実家の裏庭を掃除しようと生い茂った藪に足を踏み入れたとき、耳元で聞いたこともないような低い羽音が響きました。恐怖に足を止め、視線を上げると、そこには私の頭よりも一回り大きな、独特のマーブル模様をしたキイロスズメバチの巣が鎮座していました。パニックになりながらも家の中へ逃げ込み、すぐさまスマートフォンの画面を叩いて駆除業者を探しました。広告には安価な料金設定が並んでいましたが、実際にやってきた業者の方は、私の家の巣を見るなり神妙な顔つきになりました。巣が作られていたのは、物置と母屋が隣接する非常に狭い隙間で、しかも高さは三メートルを超えていました。さらに、活動の最盛期ということもあり、数え切れないほどの働き蜂が周囲をパトロールしている状態でした。提示された見積もり額は、なんと十万円。正直なところ、当初は足元を見られているのではないかと疑いました。しかし、業者の方の説明を聞き、実際に防護服に身を包んで命懸けで戦う姿を目の当たりにすると、その疑念は一瞬で消え去りました。作業員の方は、高所作業用の梯子を慎重にかけ、周囲のハチを特殊な吸引器と薬剤で一匹ずつ制圧していきました。その間も、ハチたちは防護服の面布に体当たりをしてきたり、毒液を飛ばしてきたりしており、私のような素人が近づいていたら、今頃どうなっていたかを想像するだけで背筋が凍りました。作業は二時間を超え、最終的には巨大な巣が完全に撤去されただけでなく、ハチが好むフェロモンを消し去るための洗浄や、再発防止の忌避剤散布まで丁寧に行われました。作業を終えたスタッフの方は、汗だくになりながらも笑顔で、これで安心してくださいと声をかけてくれました。支払った十万円という金額は、確かに家計にとっては大きな出費でしたが、あの恐怖から解放され、再び庭で安心して過ごせるようになった喜びには代えられませんでした。もしあのとき、費用の安さだけを優先して不慣れな業者に頼んでいたり、ましてや自分で何とかしようとしていたりしたら、取り返しのつかない悲劇が起きていたかもしれません。十万円という価格は、単なる作業代ではなく、プロが背負ってくれたリスクと、その後に得られる確かな安全の証なのだと、身をもって痛感した出来事でした。今では、あの巨大な巣が消えた実家の庭を見るたびに、正しい選択をした自分を誇らしく思っています。
突然の巨大なスズメバチ駆除に十万円を支払った体験