それは、久しぶりに晴れ間がのぞいた蒸し暑い土曜日の昼下がりのことでした。夕食の準備を早めに済ませようと、いつものようにキッチンの床下に収納している米びつを取り出し、蓋を開けた瞬間のことです。真っ白なお米の表面に、何やら黒い小さな粒が動いているのが目に入りました。最初はただのゴミかと思いましたが、目を凝らしてよく見ると、それは鼻の長い奇妙な形をした小さな虫、コクゾウムシでした。一匹見つけると、その周りにも、またその奥にも、モゾモゾと動く影が次々と現れ、私は思わず悲鳴を上げて蓋を閉めてしまいました。これまで何度も米びつを使ってきましたが、これほどはっきりと虫の発生を確認したのは初めてで、背筋が凍るような思いがしました。なぜ、毎日掃除をしている私のキッチンでこんなことが起きたのか、自責の念と不快感で頭がいっぱいになりました。意を決して再び蓋を開け、お米をボウルに移して確認してみると、中には白い糸のようなものでお米が数粒繋がっている箇所もありました。後で調べると、それはノシメマダラメイガという蛾の幼虫がいた証拠だそうです。結局、その日のお米はすべて外に出して広げ、虫を取り除く作業に数時間を費やすことになりました。この体験を通じて痛感したのは、お米というデリケートな食材を保管することの難しさです。それまで私は、米びつにお米を継ぎ足し、古い糠が底に溜まっていてもあまり気にしていませんでした。しかし、そのわずかな油断が、虫たちに絶好の繁殖場所を提供していたのです。あの日以来、私は米びつを新調し、密閉性の高い容器を冷蔵庫の野菜室で保管するようになりました。あの黒い影が這い回る光景を思い出すたびに、保管環境を整えることの大切さが身に沁みます。キッチンに立つたびに感じる、あの小さな生命との遭遇への恐怖は、私に食材への敬意と、徹底した管理意識を植え付ける強烈な教訓となりました。二度とあのカサカサという不気味な気配を感じたくないという一心で、私は今日も冷えた米びつの蓋を丁寧に閉めています。